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パニパレバレンタイン話、前編。
ナイ亜貴と沢あか前提ですが、前編はナイと沢登しか出てきません。
ただのドタバタというかいつも通り。

 朝、霙まじりだった空は夕方には本格的に雪を降らせていた。
 大きな固まりが窓の外にたくさん散っている。さすがに積もりそうだと乃凪は軽くため息をついた。
 雪に対して好きも嫌いもないが、帰宅の途を考えると気が重い。冬服とはいえ、雪の日にぴったりだとは言えない生地の制服と学生らしい革靴でざくざく雪を踏みしめるのは、少なくとも乃凪にとって楽しい想像ではなかった。
 そんな天候でも女性陣は大変元気な様子を見せている。
 寒空の下、学校指定の制服から伸びた生足が証拠……というよりも、今日という日が大きな原因だ。
「わはは。ハッピーバレンタインなのだよッツ!」
 あちらこちらから漂う甘い香りに割り込むようなこの存在感。
 服装だけは女子そのものだが、肝心の中身は見知った男子生徒だ。
 今日くらいは本来あるべき制服で登校できなかったのだろうかと乃凪は呆れまじりに沢登を見上げた。
「お前の姿見たらハッピーも吹き飛ぶだろうが」
 神出鬼没の元風紀委員長殿は違うクラスであろうとごく自然……いや不自然かつ平然と現れる。
 バレンタインデーに浮かれる女子生徒たちは一斉に桃色の空気から警戒のレッドへと変化。それを意に介さず、沢登は華麗にポーズを決めた。
「うむ、おかしなことを言うね。君こそもっと幸せそうにしてみたらどうだい、ナイくん。愛しい人と逢い引きの約束があるはずでは?」
「なんでお前がそんなこと知ってるんだよ」
「僕が君たちの些細な隠し事に気付かないとでもッツ?! 甘い、この僕特製のチョコレートに注入した糖分より甘いのだよ。ナイくん、さあ食べたまえ」
 鼻先に突きつけられたダークブラウンの物体はどうやらお手製らしい。我が校きっての変態と評判とは裏腹に、このチョコレートだけはまともに見えた。
 が、男からは欲しくない。
「いらん!」
 べしっと目の前の手をはたいてやったが、食べ物は無駄にしないが信条の男だけにチョコレートが床に落下することはなかった。さすがだ。
「というかお前こそ西村どうしたんだよ」
「西くんかい? チョコレートの錬金に失敗して、自宅キッチンでもう一度失敗作の再現にいそしんでいるところだね」
「錬金ってお前。料理の腕は相変わらずか。いっそそのチョコをアイツにくれてやれ」
「そんな失敗作を量産するのもかわいらしいものだよ」
「その量産の影で西村弟が餌食になっていると思うと、俺は涙を禁じ得ないがな」
 失敗作を味見させられている後輩の姿が目に浮かぶ。姉思いの彼は最終的には全て食べ切るだろうから、明日は登校できないかもしれない。
「ふむ、最大のライバルはふーみんということだね」
「どうしてそうなった!」
「では、僕も現場に急行することにしよう。ごきげんようッツ! ナイくん、そして諸君! よいバレンタインデーを過ごしたまえ!」
「言われなくてもそうするわ! とっと行け!」
 嵐のように沢登が立ち去ったあと、すぐに教室は元の桃色を取り戻す。
 チョコレートの入った包みを胸に抱いて想い人に渡しに行こうとする者、クラスの男子に手当たり次第徳用パックのチョコを配る者、女の子同士で交換して楽しんでる者様々だ。
 他の生徒たちも三年かけて沢登に対するある程度の耐性はついたのだろうな、と感心した。
 それはいいことなのかどうかは知らない。
 
 乃凪は教室の壁にかかった時計に視線を遣る。
 そろそろ待ち合わせの時間だ。
 通学用のバッグと、何人からか受け取った義理チョコの入った紙袋を手にして、乃凪は騒がしい教室をあとにした。
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テーマ:乙女ゲー - ジャンル:ゲーム



















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